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「文学ラジオ空飛び猫たち」と読む海外文学/海外文学好きなふたりのゆるくて硬派なポッドキャスト番組の紹介本一覧

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  1. 2023年「文学ラジオ空飛び猫たち」の紹介本
    1. 第140回「吹きさらう風」セルバ・アルマダ
    2. 第139回「逃げ道」ナオミ・イシグロ
    3. 第137回「ピュウ」キャサリン・レイシー
    4. 第136回「数学者の朝」キム・ソヨン
    5. 第135回「この世界からは出ていくけれど」キム・チョヨプ
    6. 第134回「インディアナ、インディアナ」レアード・ハント
    7. 第132回「すべての、白いものたちの」ハン・ガン
    8. 第132回「不快な夕闇」マリーケ・ルカス・ライネフェルト
    9. 第131回「HHhH プラハ、1942年」ローラン・ビネ
    10. 第130回「アンダー・ゼア・サム」ビル・ジャーマン
    11. 第129回「終わりのない日々」セバスチャン・バリー
    12. 第128回「彼女はマリウポリからやってきた」ナターシャ・ヴォーディン
    13. 第127回「ここから世界が始まる」トルーマン・カポーティ
    14. 第126回「トラスト」エルナン・ディアズ
    15. 第125回「亡霊の地」陳思宏
    16. 第124回「うけいれるには」クララ・デュポン=モノ
    17. 第123回「五月 その他の短篇」アリ・スミス
    18. 第122回「僕には名前があった」オ・ウン
    19. 第121回「グレイス・イヤー」キム・リゲット
    20. 第120回「過去を売る男」ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ
    21. 第119回「チェヴェングール」アンドレイ・プラトーノフ
    22. 第117回、第118回「街とその不確かな壁」村上春樹
    23. 第116回「聖なる証」エマ・ドナヒュー
    24. 第114回「嫉妬/事件」アニー・エルノー
    25. 第113回「いずれすべては海の中に」サラ・ピンスカー

2023年「文学ラジオ空飛び猫たち」の紹介本

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文学ラジオ空飛び猫たちの2023年のノート

放送日放送回タイトル
12月25日第140回4人の運命が交差する一日「吹きさらう風」セルバ・アルマダ著、宇野和美訳
12月18日第139回カズオ・イシグロの娘のデビュー短編集「逃げ道」ナオミ・イシグロ著、竹内要江訳
12月11日第138回あの名作が映像化!「Netflixオリジナル作品 すべての見えない光」原作:アンソニー・ドーア著、藤井光訳
12月04日番外編 第44回「文学フリマ東京の感想、海外文学入門」
11月27日第137回平穏な町に異質な人物が現れたとき「ピュウ」キャサリン・レイシー著、井上里訳
11月20日第136回詩とともに遠くに行く「数学者の朝」キム・ソヨン著、姜信子訳
11月13日第135回理解したい、歩み寄りたい「この世界からは出ていくけれど」キム・チョヨプ著、カン・バンファ、ユン・ジヨン訳
11月06日第134回切れぎれの回想から感じる哀しい男の人生「インディアナ、インディアナ」レアード・ハント著、柴田元幸訳
10月30日番外編 第43回「リスナーからのお便り紹介回#6」
10月30日番外編 第42回ヨン・フォッセに湧いた!「ノーベル文学賞を見守る会 当日ライブ音源」
10月16日第133回失われたものへの祈り「すべての、白いものたちの」ハン・ガン著、斎藤真理子訳
10月09日第132回自分を守るための赤いジャケット「不快な夕闇」マリーケ・ルカス・ライネフェルト著、國森由美子訳
10月02日第131回史実から忠実に再構築された物語「HHhH 1942年、プラハ」ローラン・ビネ著、高橋啓訳
09月25日番外編 第41回「持ち込み企画が出版に至るまで」(ゲスト:翻訳家 久保田祐子さん)
09月18日第130回ローリング・ストーンズを追いかけた日々「アンダー・ゼア・サム」ビル・ジャーマン著、池田祐司監修、久保田祐子訳
09月11日第129回強く生き、愛を大切にした日々を語る「終わりのない日々」セバスチャン・バリー著、木原善彦訳
09月04日番外編 第40回「リスナーからのお便り紹介回#5」
08月28日第128回亡き母のルーツを求めて「彼女はマリウポリからやってきた」ナターシャ・ヴォーディン著、川東雅樹訳
08月21日番外編 第39回「書評家に聞く本の読み方」(ゲスト:書評家 藤ふくろうさん後編)
08月14日番外編 第38回「2023年海外文学上半期ベスト5(前編)」(ゲスト:書評家 藤ふくろうさん)
08月07日第127回天才の原点が味わえる読書体験「ここから世界が始まる ートルーマン・カポーティ初期短篇集ー」トルーマン・カポーティ著、小川高義訳
07月31日第126回4つの物語から浮かび上がる真実「トラスト ー絆/わが人生/追憶の記/未来ー」エルナン・ディアズ著、井上里訳
07月24日第125回台湾とベルリンが交差する魂の慟哭の物語「亡霊の地」陳思宏著、三須祐介訳
07月17日第124回第三子には重い障がいがあった「うけいれるには」クララ・デュポン=モノ著、松本百合子訳
07月10日第123回12ヵ月を彩る奇妙で強烈な物語「五月 その他の短編」アリ・スミス著、岸本佐知子訳
07月03日第122回人に生まれて、人を考える詩集「僕には名前があった」オ・ウン著、吉川凪訳
06月26日番外編 第37回「リスナーからのお便り紹介回#4」
06月19日第121回16歳の少女が挑む、生死をかけたキャンプ「グレイス・イヤー」キム・リゲット著、堀江里美訳
06月12日第120回語り手はヤモリ!偽りの過去は真実となるのか?「過去を売る男」ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ著、木下眞穂訳
06月05日番外編 第36回「第九回日本翻訳大賞と文学フリマを振り返る」
05月29日第119回遂に翻訳された最も謎めいたロシアの傑作長編「チェヴェングール」アンドレイ・プラトーノフ著、工藤順、石井優貴訳
05月22日第118回ネタバレあり!村上春樹の最新長編紹介回「街とその不確かな壁」(後編)村上春樹著
05月15日第117回村上春樹の最新長編、ネタバレなしで紹介!「街とその不確かな壁」(前編)村上春樹著
05月08日番外編 第35回「『聖なる証』の翻訳話&文学フリマ告知回」(ゲスト:翻訳者 吉田育未さん)
05月01日第116回真実を諦めないでいられるか?(ゲスト:翻訳者 吉田育未さん)「聖なる証」エマ・ドナヒュー著、吉田育未訳
04月17日第115回清朝末期の香港にあの二人が現れた!「辮髪のシャーロック・ホームズ」莫理斯(トレヴァー・モリス)著、舩山むつみ訳
04月24日番外編 第34回「ビブリオバトルイベントの結果報告とリスナーからのお便り紹介回#3」
04月10日第114回ノーベル文学賞作家によるオートフィクション「嫉妬/事件」アニー・エルノー著、堀茂樹・菊池よしみ訳
04月03日第113回完成度が高く奇想天外なSF短編集「いずれすべては海の中に」サラ・ピンスカー著、市田泉訳
03月27日第112回謎多き植物で結ばれる女性たちの物語「地球の果ての温室で」キム・チョヨプ著、カン・バンファ訳
03月20日第111回理解が追いつかない両性具有の異性社会「闇の左手」アーシュラ・K・ル=グウィン著、小尾芙佐訳
03月13日番外編 第33回びっくりな近況報告、AIとSNS「ねじまきラジオさんがきたⅢ(ゲスト回)」
03月06日第110回ルーツをめぐるオートフィクション「ポーランドのボクサー」エドゥアルド・ハルフォン著、松本健二訳
02月27日第109回オリエントに流れ着いた人たち「雨に打たれて」アンネマリー・シュヴァルツェンバッハ著、酒寄進一訳
02月20日番外編 第32回「ビブリオバトル実践編!阪大ビブリオバトルゲスト回(後編)」
02月13日番外編 第31回「阪大ビブリオバトルの二人に聞くビブリオバトルとは?ゲスト回(前編)」
02月06日番外編 第30回「リスナーからのお便り紹介回#2」
01月30日第108回亡き母の愛が解き放つ少年の心「惑う星」リチャード・パワーズ著、木原善彦訳
01月23日第107回物語がもたらす、ささやかな温もり「大聖堂」レイモンド・カーヴァー著、村上春樹訳
01月16日第106回現代に甦ったギリシア神話の怪物と英雄がまさかの展開に!?「赤の自伝」アン・カーソン著、小磯洋光訳
01月09日第105回誰にも潜むモンスター性「花びらとその他の不穏な物語」グアダルーペ・ネッテル著、宇野和美訳
01月02日番外編 第29回2023年もよろしくお願いします!「2022年の振り返り」

第140回「吹きさらう風」セルバ・アルマダ

吹きさらう風 (創造するラテンアメリカ 8)
セルバ・アルマダ,宇野和美
松籟社

感傷にも甘さにも寄りかからない凛とした物語世界。アルゼンチン辺境で布教の旅を続ける一人の牧師が、故障した車の修理のために、とある整備工場にたどりつく。牧師、彼が連れている娘、整備工の男、そして男とともに暮らす少年の4人は、車が直るまでの短い時間を、こうして偶然ともにすることになるがー。ささやかな出来事のつらなりを乾いた筆致で追いながら、それぞれが誰知らず抱え込んだ人生の痛みを静かな声で描き出す、注目作家セルバ・アルマダの世界的話題作。

第139回「逃げ道」ナオミ・イシグロ

逃げ道
ナオミ・イシグロ,竹内要江
早川書房

母親と再婚相手がわかってくれないと嘆く夢見がちな男の子、新婚の妻の理解不能な一面を知ってしまった夫、悩みをまったく分かち合えない恋人たち。不器用な人々が抱くさみしさを、温かな眼差しと幻想的な表現で描く、イギリス文学界の新星による傑作短篇集!

第137回「ピュウ」キャサリン・レイシー

ピュウ
キャサリン・レイシー,井上里
岩波書店

舞台はアメリカ南部の小さな町。教会の信徒席で眠る「わたし」を町の住人はピュウ(信徒席)と名づけた。外見からは人種も性別もわからず、自らも語ろうとしないピュウの存在に人々は戸惑う。だが次第に町の隠れた側面が明らかになり……。気鋭の作家、キャサリン・レイシーが人種や性の枠組みを揺さぶる、挑発的な意欲作。

第136回「数学者の朝」キム・ソヨン

数学者の朝 (セレクション韓・詩 3)
キム・ソヨン,姜信子
クオン

見えない場所、聞こえない声、いまだない言葉
語りえない物語のために

詩が広く愛されている韓国において
文学性と社会性を兼ね備え、深く心に刻まれる詩を紡ぐ
キム・ソヨンの単著詩集を初邦訳。

韓進自動車の労働者の闘争に寄り添って書かれた「主導者」、
映画「詩人の恋」で朗読された「だから」など、49編を収録。

第135回「この世界からは出ていくけれど」キム・チョヨプ

この世界からは出ていくけれど
キム・チョヨプ,カン・バンファ,ユン・ジヨン
早川書房

人より何十倍も遅い時間の中で生きる姉への苛立ちを抑えられない妹の葛藤を描く「キャビン方程式」、幻肢に悩まされ三本目の腕の移植を望む恋人を理解したい男の旅路を追う「ローラ」–社会の多数派とそうなれない者とが、理解と共存を試みる人生の選択7篇

第134回「インディアナ、インディアナ」レアード・ハント

インディアナ、インディアナ
レアード・ハント,柴田元幸
twililight

“切れぎれの回想、現在のノアの心理、オーパルからの手紙、ノアの父ヴァージルや母ルービーをめぐる一連の奇妙な逸話…。
事実は見えなくても、ノアの胸に満ちる強い喪失感は、一ページ目からはっきり伝わってくる。その静かな哀しみが、ノアと猫たちとのどこかとぼけたやりとりや、ノアの父親ヴァージルのやたらと衒学的な物言いなどから浮かび上がる淡いユーモアと絶妙に混じりあい、それらすべてが、文章教室的規範から逸脱することを恐れない自在の文章で語られることによって、この作品を、昨今の小説には稀な、とても美しい小説にしている。”(訳者・柴田元幸)

哀しみを抱えるすべての人へ。
2006年刊行の「とても美しい小説」を復刊しました。

第132回「すべての、白いものたちの」ハン・ガン

すべての、白いものたちの (河出文庫)
ハン・ガン,斎藤真理子
河出書房新社

アジア初のブッカー国際賞作家による奇蹟の傑作が文庫化。おくるみ、産着、雪、骨、灰、白く笑う、米と飯……。朝鮮半島とワルシャワの街をつなぐ65の物語が捧げる、はかなくも偉大な命への祈り。

生後すぐに亡くなった姉をめぐり、ホロコースト後に再建されたワルシャワの街と、朝鮮半島の記憶が交差する。
文庫化にあたり、訳者の斎藤真理子による「『すべての、白いものたちの』への補足」、平野啓一郎による解説「恢復と自己貸与」を収録。

第132回「不快な夕闇」マリーケ・ルカス・ライネフェルト

不快な夕闇
マリーケ・ルカス・ライネフェルト,國森由美子
早川書房

オランダの酪農家一家に育った10歳のヤスは、クリスマスの晩餐用に殺されるかもしれない自分のウサギの代わりに兄が死にますようにと神に祈る。その祈りが現実となった時、不穏な空想の闇がヤスを襲う。史上最年少でのブッカー国際賞受賞作。解説/鴻巣友季子

第131回「HHhH プラハ、1942年」ローラン・ビネ

HHhH: プラハ、1942年 (創元文芸文庫)
ローラン・ビネ,高橋啓
東京創元社

ノーベル賞受賞作家マリオ・バルガス・リョサを驚嘆せしめたゴンクール賞最優秀新人賞受賞の傑作。金髪の野獣と呼ばれたナチのユダヤ人大量虐殺の責任者ハイドリヒと彼の暗殺者である二人の青年をノンフィクション的手法で描き読者を慄然させる傑作。

第130回「アンダー・ゼア・サム」ビル・ジャーマン

アンダー・ゼア・サム ブルックリンの青年が覗いたローリング・ストーンズの奥座敷
ビル・ジャーマン,池田祐司,久保田祐子
リットーミュージック

10歳でローリング・ストーンズのファンになり、1978年、ハイスクール時代にこっそり忍び込んだ学校の印刷室でファンジン第1号を発行。〈ベガーズ・バンケット〉と題されたそのミニコミは、やがてローリング・ストーンズのメンバーにも認められ、遂にはバンドの公式ニュースレターに! しかし80年代以降、肥大化していくロック・ビジネスの流れのなかで、メンバーとは近いのにバンドは遠い存在になっていく……。まるで目の前にキースやミックがいるかのような生き生きとした筆致で描かれる、涙と笑いの青春ノンフィクション!

第129回「終わりのない日々」セバスチャン・バリー

終わりのない日々 (エクス・リブリス)
セバスチャン・バリー,木原善彦
白水社

語り手は、十九世紀半ばの大飢饉に陥ったアイルランドで家族を失い、命からがらアメリカ大陸に渡ってきたトマス・マクナルティ。頼るもののない広大な国でトマスを孤独から救ったのは、同じ年頃の宿無しの少年ジョン・コールだった。美しい顔立ちに幼さの残る二人は、ミズーリ州の鉱山町にある酒場で、女装をして鉱夫たちのダンスの相手をする仕事を見つける。初めてドレスに身を包んだとき、トマスは生まれ変わったような不思議な解放感を覚える。やがて体つきが男っぽくなると、二人は食いっぱぐれのない軍隊に入り、先住民との戦いや南北戦争をともに戦っていくーー。

第128回「彼女はマリウポリからやってきた」ナターシャ・ヴォーディン

彼女はマリウポリからやってきた
ナターシャ・ヴォーディン,川東雅樹
白水社

半世紀以上を経て娘が探し当てた亡き母の生。二〇一三年のある夏の夜、若くして逝った母の痕跡をたどる旅が始まった。手がかりとなるのは母の名前と残された三枚の写真、二通の書類、そして「わたし」のおぼろげな記憶だけ。忘却に抗い、失われた家族の歴史と、自らのルーツを見いだす瞠目の書。ライプツィヒ書籍見本市賞受賞作。

第127回「ここから世界が始まる」トルーマン・カポーティ

ここから世界が始まる トルーマン・カポーティ初期短篇集
トルーマン・カポーティ,小川高義
新潮社

いずれ満開に咲こうとしている恐るべき才能の原点。「早熟の天才」は、デビュー前の若書きも凄かった! グレニッチ高校時代から二十代初めまでの、ニューヨークの公共図書館が所蔵する未発表作品14篇を厳選。ホームレス、老女、淋しい子どもーー社会の外縁に住まう者に共感し、明晰な文章に磨きをかけていく。若き作家の輝けるヴォイスに触れる貴重な短篇集。解説・村上春樹。

第126回「トラスト」エルナン・ディアズ

トラスト―絆/わが人生/追憶の記/未来―
エルナン・ディアズ,井上里
早川書房

1930年代、NY。金融の寵児、アンドルー・べヴルをモデルにした小説『絆』が出版されたが本人はこれに猛反発。自伝を秘書に代筆させる。その後秘書は当時の回想録を記し、数十年後、アンドルーの妻の日記を発見するがーー。視点の異なる四篇からなる実験的小説。

第125回「亡霊の地」陳思宏

亡霊の地
陳思宏,三須祐介
早川書房

同性愛者として生きることへの抑圧から逃れるため、台湾の故郷の村、永靖を離れ、ベルリンで暮らしていた作家の陳天宏は恋人を殺してしまう。刑期を終え、よるべのないドイツから、生まれ育った永靖に十数年ぶりに戻って来た。折しも中元節を迎えていた故郷では、死者の魂を迎える準備が進んでいた。天宏のいなくなった両親と結婚した姉たち、狂った姉、そして兄。生者と死者の語りで、家族が引き裂かれた理由と天宏が恋人を殺した理由、土地の秘密、過ぎ去りし時代の恐怖と無情が徐々に明らかになっていく。2020年、台湾文学賞金典年度大賞と金鼎賞文学図書賞を受賞。2022年秋、ニューヨーク・タイムズから「最も読みたい本」に選出された、最注目の台湾の若手作家が贈る慟哭の物語。

第124回「うけいれるには」クララ・デュポン=モノ

うけいれるには
クララ・デュポン=モノ,松本百合子
早川書房

フランス、セヴェンヌ地方。両親、長男、長女。幸せな家庭に待望の第三子が生まれた。愛らしい子どもだったが、次第に彼が重度の障がいを抱えていることが分かる。長男は弟の世話にのめり込んでいくが、長女は弟の存在に徹底的に反抗する。だが、介護に疲れ果てた家族を救うために立ち上がったのは長女だったー。障がいを持つ子どもが生まれた家庭の葛藤を、庭の石の視点から克明に描き、フランスでは高校生が選ぶゴンクール賞、フェミナ賞、ランデルノー賞を受賞し、日本では第1回日本の学生が選ぶゴンクール賞を受賞した話題作。

第123回「五月 その他の短篇」アリ・スミス

五月 その他の短篇
アリ・スミス,岸本佐知子
河出書房新社

近所の木に身も世もなく恋をする「五月」、地下鉄駅構内で死神とすれちがう「生きるということ」、他人に見えないバグパイプの楽隊につきまとわれる「スコットランドのラブソング」、恋人がベッドの中で唐突に浮気を告白する「信じてほしい」、クリスマスイブの夜、三人の酔っぱらい女が教会のミサに乱入する「物語の温度」…。重層的な物語に身をゆだね、言葉の戯れを愉しむうちに、思いがけない場所に到達する12の短篇集。

第122回「僕には名前があった」オ・ウン

「人」から始まり「人」で終わる連作詩集
言葉遊びで描く喜びと悲しみ

「会う時はアンニョンでいたくてアンニョン
別れる時はアンニョンではいられなくてアンニョン

待つ人が路地にいた。
待つ時までいた」(「待つ人」より)

言葉遊びに気を取られているうちに周囲の時空が歪み始め、
自分がいつの間にか韓国の、あるいは日本にも共通した
生きづらい世の光景を眺めていることに気づいて愕然とする。
そして、この詩人はただものではないらしいと、
改めて認識するだろう。 ──訳者解説より

第121回「グレイス・イヤー」キム・リゲット

グレイス・イヤー: 少女たちの聖域
キム・リゲット,堀江里美
早川書房

ガーナー郡に住む16歳のすべての少女は、危険な魔力を持つとされ、森の奥のキャンプへ一年間追放される。少女ティアニーが、謎に包まれた通過儀礼〈グレイス・イヤー〉でのサバイバルの果てに見た真実。『侍女の物語』×『蠅の王』のポスト・ディストピア小説

第120回「過去を売る男」ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ

過去を売る男 (エクス・リブリス)
ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ,木下眞穂
白水社

語り手は一匹のヤモリ。アンゴラの首都ルアンダで、フェリックス・ヴェントゥーラの家に棲みつき、彼の生活を観察している。フェリックスは人々の「過去」を新しく作り直す仕事をしている。長年にわたる激しい内戦が終わり、アンゴラには新興の富裕層が生まれつつあるが、すべてを手にしたかに見える彼らに足りないのは由緒正しい家系なのだ。

第119回「チェヴェングール」アンドレイ・プラトーノフ

チェヴェングール
アンドレイ・プラトーノフ,工藤順,石井優貴
作品社
第9回日本翻訳大賞受賞作

死への興味が嵩じて湖に自ら身を投げだした父親の息子アレクサンドル(サーシャ)は、ドヴァーノフ夫妻に引き取られて生活するようになり、やがて、ボリシェヴィキとして、彼の同伴者であり親友のコピョンキンとともに共産主義を探して県域を放浪し、共産主義が完成した理想郷チェヴェングールを見出すーー。
「もっとも謎めいて、もっとも正統的でないロシア作家」とも称されるプラトーノフの代表作にして生前に完成した唯一の長篇小説。ロシア文学の肥沃な森に残された最後の傑作、本邦初訳。

第117回、第118回「街とその不確かな壁」村上春樹

街とその不確かな壁
村上春樹
2023/04/13
新潮社

村上春樹、6年ぶりの最新長編1200枚、待望の刊行!

その街に行かなくてはならない。なにがあろうとーー〈古い夢〉が奥まった書庫でひもとかれ、呼び覚まされるように、封印された“物語”が深く静かに動きだす。魂を揺さぶる純度100パーセントの村上ワールド。

第116回「聖なる証」エマ・ドナヒュー

聖なる証 (マグノリアブックス)
エマ・ドナヒュー,吉田育未
2023/04/20
オークラ出版

1859年、アイルランドの田舎町。絶食を続けているにもかかわらず健やかに生きる少女アナの謎に迫る英国人看護師リブ・ライト。少女はほんとうに奇跡の存在なのか?少女はいったい何者なのか?リブがアナを「救うべきひとりの患者」として見つめ始めたとき、さまざまな人間の思惑が明らかになる。少女の生存に必要なのは、信仰か科学か、それとも…?喪失と再生、愛の形を描く歴史フィクション。

第114回「嫉妬/事件」アニー・エルノー

嫉妬/事件 (ハヤカワepi文庫)
アニー・エルノー,堀茂樹,菊地よしみ
2022/10/26
早川書房

別れた男が他の女と暮らすと知り、私はそのことしか考えられなくなる。どこに住むどんな女なのか、あらゆる手段を使って狂ったように特定しようとしたがー。妄執に取り憑かれた自己を冷徹に描く「嫉妬」。1963年、中絶が違法だった時代のフランスで、妊娠してしまったものの、赤ん坊を堕ろして学業を続けたい大学生の苦悩と葛藤、闇で行われていた危険な堕胎の実態を克明に描く「事件」を合わせて収録。

第113回「いずれすべては海の中に」サラ・ピンスカー

いずれすべては海の中に (竹書房文庫)
サラ・ピンスカー,市田泉
2022/05/31
竹書房

最新の義手が道路と繋がった男の話(「一筋に伸びる二車線のハイウェイ」)、世代間宇宙船の中で受け継がれる記憶と歴史と音楽(「風はさまよう」)、クジラを運転して旅をするという奇妙な仕事の終わりに待つ予想外の結末(「イッカク」)、多元宇宙のサラ・ピンスカーたちが集まるサラコンで起きた殺人事件をサラ・ピンスカーのひとりで解決するSFミステリ(「そして(Nマイナス1)人しかいなくなった」)など。奇想の海に呑まれ、たゆたい、息を継ぎ、詠ぎ続ける。その果てに待つものはー。静かな筆致で描かれる、不思議で愛おしいフィリップ・K・ディック賞を受賞した異色短篇集。

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