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- 「フィクションのエル・ドラード」の本
- 「僕の目で君自身を見ることができたなら」カルロス・フランス
- 「閉ざされた扉」ホセ・ドノソ
- 「証人」フアン・ビジョーロ
- 「グロサ」フアン・ホセ・サール
- 「燃やされた現ナマ」リカルド・ピグリア
- 「廃墟の形」フアン・ガブリエル・バスケス
- 「英雄たちの夢」アドルフォ・ビオイ・カサーレス
- 「帝国の動向」フェルナンド・デル・パソ
- 「レオノーラ」エレナ・ポニアトウスカ
- 「吐き気」オラシオ・カステジャーノス・モヤ
- 「時との戦い」アレホ・カルペンティエール
- 「気まぐれニンフ」ギジェルモ・カブレラ・インファンテ
- 「案内係 ほか」フェリスベルト・エルナンデス
- 「犬を愛した男」レオナルド・パドゥーラ
- 「ライオンを殺せ」ホルヘ・イバルグエンゴイティア
- 「夜のみだらな鳥」ホセ・ドノソ
- 「マイタの物語」マリオ・バルガス・ジョサ
- 「圧力とダイヤモンド」ビルヒリオ・ピニェーラ
- 「バロック協奏曲」アレホ・カルペンティエール
- 「場所」マリオ・レブレーロ
- 「傷痕」フアン・ホセ・サエール
- 「襲撃」レイナルド・アレナス
- 「方法異説」アレホ・カルペンティエール
- 「コスタグアナ秘史」フアン・ガブリエル・バスケス
- 「人工呼吸」リカルド・ピグリア
- 「ロリア侯爵夫人の失踪」ホセ・ドノソ
- 「ガラスの国境」カルロス・フエンテス
- 「八面体」フリオ・コルタサル
- 「対岸」フリオ・コルタサル
- 「別れ」フアン・カルロス・オネッティ
- 「境界なき土地」ホセ・ドノソ
- 「孤児」フアン・ホセ・サエール
- 「ただ影だけ」セルヒオ・ラミレス
水声社「フィクションのエル・ドラード」の一覧
作品名 | 作家名 | 翻訳者名 | 国 | 発売日 |
---|---|---|---|---|
僕の目で君自身を見ることが できたなら | カルロス・フランス | 富田広樹 | チリ,スペイン | 2024/04/18 |
閉ざされた扉 | ホセ・ドノソ | 寺尾隆吉 | チリ | 2023/09/08 |
証人 | フアン・ビジョーロ | 山辺弦 | メキシコ | 2023/07/20 |
グロサ | フアン・ホセ・サール | 浜田和範 | アルゼンチン | 2023/02/24 |
燃やされた現ナマ | リカルド・ピグリア | 大西亮 | アルゼンチン | 2022/02/25 |
廃墟の形 | フアン・ガブリエル・バスケス | 寺尾隆吉 | コロンビア | 2021/07/21 |
英雄たちの夢 | アドルフォ・ビオイ・ カサーレス | 大西亮 | アルゼンチン | 2021/05/01 |
帝国の動向 | フェルナンド・デル・パソ | 寺尾隆吉 | メキシコ | 2021/02/01 |
レオノーラ | エレナ・ポニアトウスカ | 富田広樹 | メキシコ (フランス) | 2020/12/25 |
吐き気 | オラシオ・カステジャーノス・ モヤ | 浜田和範 | エルサルバドル | 2020/06/25 |
時との戦い | アレホ・カルペンティエール | 鼓直, 寺尾隆吉 | キューバ | 2020/02/25 |
気まぐれニンフ | ギジェルモ・カブレラ・ インファンテ | 山辺弦 | キューバ | 2019/12/01 |
案内係 ほか | フェリスベルト・エルナンデス | 浜田和範 | ウルグアイ | 2019/06/25 |
犬を愛した男 | レオナルド・パドゥーラ | 寺尾隆吉 | キューバ | 2019/04/15 |
ライオンを殺せ | ホルヘ・イバルグエンゴイティア | 寺尾隆吉 | メキシコ | 2018/10/31 |
夜のみだらな鳥 | ホセ・ドノソ | 鼓直 | チリ | 2018/02/01 |
マイタの物語 | マリオ・バルガス・ジョサ | 寺尾隆吉 | ペルー | 2018/01/25 |
圧力とダイヤモンド | ビルヒリオ・ピニェーラ | 山辺弦 | キューバ | 2017/12/20 |
バロック協奏曲 | アレホ・カルペンティエール | 鼓直 | キューバ (スイス) | 2017/06/08 |
場所 | マリオ・レブレーロ | 寺尾隆吉 | ウルグアイ | 2017/03/30 |
傷痕 | フアン・ホセ・サエール | 大西亮 | アルゼンチン | 2017/02/24 |
襲撃 | レイナルド・アレナス | 山辺弦 | キューバ | 2016/12/01 |
方法異説 | アレホ・カルペンティエール | 寺尾隆吉 | キューバ | 2016/10/01 |
コスタグアナ秘史 | フアン・ガブリエル・バスケス | 久野量一 | コロンビア | 2016/01/01 |
人工呼吸 | リカルド・ピグリア | 大西亮 | アルゼンチン | 2015/09/01 |
ロリア侯爵夫人の失踪 | ホセ・ドノソ | 寺尾隆吉 | チリ | 2015/07/01 |
ガラスの国境 | カルロス・フエンテス | 寺尾隆吉 | メキシコ | 2015/03/01 |
八面体 | フリオ・コルタサル | 寺尾隆吉 | アルゼンチン | 2014/08/01 |
対岸 | フリオ・コルタサル | 寺尾隆吉 | アルゼンチン | 2014/02/01 |
別れ | フアン・カルロス・オネッティ | 寺尾隆吉 | ウルグアイ | 2013/10/01 |
境界なき土地 | ホセ・ドノソ | 寺尾隆吉 | チリ | 2013/07/01 |
孤児 | フアン・ホセ・サエール | 寺尾隆吉 | アルゼンチン | 2013/05/01 |
ただ影だけ | セルヒオ・ラミレス | 寺尾隆吉 | ニカラグア | 2013/03/01 |
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水声社「フィクションのエル・ドラード」のこと
blog 水声社
《フィクションのエル・ドラード》
編集=寺尾隆吉
欧米を席巻したラテンアメリカ文学の〈ブーム〉から半世紀を経た現在も、政治と社会の混乱のなかから、陸続と新しい小説、新しい小説家たちが現われ続けている。〈ブーム〉の巨匠たちから異色の新鋭まで、フィクションの未来を告げるシリーズ。
ある読書好きな方の本棚、その圧巻の並びに目が釘付けになった。Xのおすすめで流れてきた、そのポストに書かれていたのは、《水声社フィクションのエル・ドラードが本当に好き》という言葉。どこかで聞いた気もするけれど、どんなシリーズだったかな?と気になって、一覧表を作り始めることにした(↓こちらでその本棚が見られます)。
水声社の「フィクションのエル・ドラード」は、ラテンアメリカ文学専門の叢書。あのカブリエル・ガルシア=マルケスの翻訳もされている、寺尾隆吉さんが監修されているシリーズ。そして、そのほぼ半分を、寺尾さんが翻訳されている。
アルゼンチン、キューバ、チリ、ペルー、メキシコ、コロンビア…と、ラテンアメリカ文学とひとことで言っても、いろんな国の作家の作品が揃っている。はじめましての作家さんもいっぱい。
『犬を愛した男』とか、『気まぐれニンフ』とか、ほのぼのした物語につけてもおかしくないタイトルに誘われてクリックすると、想像と全く違うあらすじが書かれていたりして、ある意味、そのイメージを裏切らない感じが、「やっぱりラテンアメリカ文学だ」と、逆にうれしくなる(犬はボルゾイ犬だった)。
個人的には、エレナ・ポニアトウスカによる、画家のレオノーラ・キャリントンを主人公とした伝記的小説『レオノーラ』がとても気になった。『百年の孤独』と双璧をなすと書かれていた、ホセ・ドノソの『夜のみだらな鳥』もなんかすごそう。
フィルムアート社さんのXより
「恐れるな。 『百年の孤独』と並ぶラテン・アメリカ文学の金字塔ホセ・ドノソ著『夜のみだらな鳥』はヴォネガットの励ましがなければ誕生しなかったかも?
【追記】フィルムアート社さんのXのポストに、『鳥の本』を書くのを諦めかけていたホセ・ドノソに、カート・ヴォネガットが励ましの言葉をかけていたというエピソードが載っていました。ドノソさん、そういう感じの人だったんですね。ヴォネガットの言葉も熱い感じで、なんかよかった。
それは、ヴォネガットの『読者に憐れみを』にある言葉みたい。ついでに、ヴォネガットが猫背だという情報も入手してしまった。改めて表紙のイラストを見たら、ちゃんと猫背な感じに描かれてました。
そして、やっぱりいいなと思うのは、シリーズを通して装丁が揃っているところ。幻戯書房の「ルリユール叢書」もそうだけれど、カラフルなブックデザインは、こうして本棚に並べるとやはり壮観。
作成した一覧表の方は一応、国別に分類してはみたけれど、本の色と国に関係はなさそうな感じ。「ライオンを殺せ」はメキシコで黄色系だけど、他はそうでもないし、普通に本の内容に合わせた色なのかな(先程の本棚を見た感じだと、なぜか薄紫みたいな色が多かった)。
くじらい🐳 Hisashi KujiraiさんのXより
「同人誌で〈フィクションのエル・ドラード〉全レビューをやったのからはじまり、とうとうSFマガジンでラテンアメリカ特集を組み、寺尾隆吉先生にインタビューするところまで来てしまった。」
そう、翻訳者で書評家の鯨井久志さん(『チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク (竹書房文庫)』の翻訳でおなじみだけど、長い)と、空舟千帆さんが主宰するカモガワ編集室では、《フィクションのエル・ドラード》全レビューを収録した海外文学&SFレビュー同人誌『カモガワGブックスVol.1 非英語圏文学特集』を販売中。
その鯨井さんのブログ「機械仕掛けの鯨が」は、海外文学ブログとしてとても素晴らしくて、さっそくお気に入りに登録。「フィクションのエル・ドラード」の他にも、「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」とか「柴田元幸編アンソロジー」とか興味深いレビューがたくさんあって楽しい。
そして、Xのポストにもあった『S-Fマガジン 2024年 12月号 [雑誌]』は「ラテンアメリカSF特集」。監修は、鯨井久志さん。「ラテンアメリカ文学ブックガイド」や、寺尾隆吉さんへのインタビュー、「最新スペイン語圏SF動向」など、充実した内容。連載も面白そうです。
この2018年の寺尾隆吉さんのインタビューに、ラテンアメリカ文学の活性化の理由の一つに、スペイン政府からの助成金があることが書かれていました。
↓こちらのサイトは、スペイン語圏の作品を外国で翻訳出版に対して交付される助成金の申請書類の作成などを手伝ってくれるところみたい。翻訳出版の促進のため、積極的に動いてくれる国があるのはありがたいですね。
水声社さんは、Amazonで販売していません。
【書店・オンライン書店でのご注文】
弊社の刊行物は全国どこの書店でもお求めになれます。書店の店頭にない場合には、その書店にご注文ください。ただし、オンライン書店アマゾンには、2014年5月以降、同社が再販契約を遵守し、定価販売を励行するまで、出荷を停止しておりますので、同サイトではお求めになれません。なお、アマゾン以外のオンライン書店では販売しております。
ほんと、危ないところだった。SNSにも《Amazonでは販売しておりません》と書かれていたのだけれど、太字とかではないから、見逃してしまっていて。もう少しで一覧表をAmazonのリンクにしてしまうところだった。
INTERNET Watch Watch
出版3社がAmazonへの出荷停止を発表(2014/05/12)
こんなことがあったんですね。だから今現在、Amazonで売られている本は、マーケットプレイスの本であるはずなのだけれど、実際にはそうでもなくて、Amazonで「水声社」を検索して出てくる新刊などは、出荷元と販売元が「Amazon」になっている。だから私も、在庫がない本があるというだけで、まさか水声社さんがAmazonでの販売自体をされていないとは、気がつかなかった。
問題なのは、猫の泉さんのXのポストにあるように、Amazon出荷となっているその本を注文した場合、注文を受け付けておきながら、キャンセルされているのではないかということ。それは、読者さんにとっても、水声社さんにとっても、いいことではないはず。どうにか解決しますように。
「フィクションのエル・ドラード」の本
「僕の目で君自身を見ることができたなら」カルロス・フランス
『僕の目で君自身を見ることができたなら』
カルロス・フランス,富田広樹
2024/04/18
水声社
19世紀半ば、南米大陸の調査旅行に同行した画家ルゲンダスは、チリに寄港した折に美しい貴婦人カルメンと邂逅する。お互いに惹かれ合い、一線を越えたふたりの前に現れたのは、ビーグル号で航海中のチャールズ・ダーウィンだった。情熱的な画家と理性的な科学者、対照的な二人の男はアンデスの高みで対峙することとなる…。史実とフィクションを巧みに織り交ぜ、見事な想像力で“愛”を描きだす野心的長編。
楽天ブックス
『完訳 ビーグル号航海記 上 (平凡社ライブラリー)』チャールズ・R・ダーウィン,荒俣宏
こちらも気になる、22歳の若きダーウィン、地球一周大探検の記録。
「閉ざされた扉」ホセ・ドノソ
『閉ざされた扉』
ホセ・ドノソ,寺尾隆吉
2023/09/08
水声社
謎のヴェールに包まれた変身あるいは失踪で幕を閉じる物語、これぞ手品師ドノソの真骨頂だ。–オラシオ・カステジャーノス・モヤ
崩壊する日常
眠ることで世界の神秘を見つけようとする男を描く表題作「閉ざされた扉」をはじめ、ネコ科動物の絵を蒐集する主人公が狂気にはまり込んでいく様を描く「サンテリセス」、失職した老人と不思議な少女とが出会う「アナ・マリア」、厳格で気位の高い独身女性がはからずも野良犬と意気投合する「散歩」など、日常からつまはじきにされた者たちの世界を優れた洞察力で描き出す著者の全短編。
WEB本の雑誌
破格のページターナー『リンカーン・ハイウェイ』に没入! – 新刊めったくたガイド(文=石川美南)
「証人」フアン・ビジョーロ
『証人』
フアン・ビジョーロ,山辺弦
2023/07/20
水声社
ヨーロッパの大学で文学を研究するフリオ・バルディビエソはサバティカル休暇を取得し、24年ぶりに祖国メキシコへと帰還する。従妹ニエベスとの淡い記憶、親族との再会、旧友との思いがけぬ邂逅を経るうちに、無数の思惑に囲まれたフリオは不穏な事件に巻き込まれていく…。政権交代を果たした転換期のメキシコを舞台に、自身の記憶と祖国の記憶を重層的に描き出した、鮮烈な歴史=物語。
「グロサ」フアン・ホセ・サール
『グロサ』
フアン・ホセ・サール,浜田和範
2023/02/24
水声社
《語り》への強迫的衝動
1961年10月23日の朝、二人の青年アンヘル・レトとマテマティコが〈街〉の目抜き通り21ブロックを一時間ほど共に散歩する。両者とも出席が叶わなかった詩人ワシントンの誕生日会の詳細を耳にしたマテマティコは、散歩のさなかその真相をレトに語って聞かせるが……プラトン、ジョイス、フロベール、ボルヘスら巨人たちの文業を受け止めつつ《同一の場所、同一の
一度ひとたび》を語り明かそうと試みる、ひとつの広大な物語世界。
「燃やされた現ナマ」リカルド・ピグリア
『燃やされた現ナマ』
リカルド・ピグリア,大西亮
2022/02/25
水声社
1965年のブエノスアイレス郊外、命知らずの4人の若者たちが現金輸送車を襲撃するという無謀な計画を立てた。まんまと大金の《現ナマ》をせしめた強盗団は警察からの逃走をはかり、アパートの一室に立てこもる。籠城作戦のすえに彼らが取った行動とは……?
幼年時代の思い出、娼婦たちとの出会い、獄中生活、セックスとドラッグへの耽溺など、強盗団のメンバーたちそれぞれの過去をフラッシュバックの手法で描き出し、《社会を震撼させた衝撃的事件》をフィクションの力で描き出した傑作。
「廃墟の形」フアン・ガブリエル・バスケス
『廃墟の形』
フアン・ガブリエル・バスケス,寺尾隆吉
2021/07/21
水声社
1948年、ボゴタの路上で暗殺された政治家ホルヘ・エリエセル・ガイタンの死はコロンビアを深刻な危機に陥れた。2014年、博物館に展示されたガイタンのスーツを盗もうとした男が逮捕される。
ガイタン殺害の背後にある「真実」を探求するこの男は、かつて作家J・G・バスケスに接近し、ある本を書くようしつこく迫っていた……
ガイタン暗殺にジョン・F・ケネディ暗殺が関係するなど、すべてに陰謀を嗅ぎつける謎の男、カルロス・カルバージョを通してコロンビアの歴史に迫り、入念な調査を元に過去の闇をスリリングに描き出す傑作長編。
WEB本の雑誌
比類なき円錐小説ベルンハルト『推敲』に大満足! – 新刊めったくたガイド(文=藤ふくろう)
「英雄たちの夢」アドルフォ・ビオイ・カサーレス
『英雄たちの夢』
アドルフォ・ビオイ・カサーレス,大西亮
2021/05/01
水声社
1927年、カーニバルに沸くブエノスアイレスの夜、主人公のエミリオ・ガウナは仲間たちとどんちゃん騒ぎをしたすえに意識もおぼろのまま“仮面の女”と邂逅する。女はいつのまにか消えてしまうが、疲労感のうちに人生の頂点をなす瞬間を経験する。あの夢のような体験をもう一度生きなおすべく主人公は3年後、ふたたび仲間たちを引き連れてカーニバルの夜にくり出すのだが…ラプラタ幻想文学の旗手ビオイ・カサーレスによる、ボルヘスが“世界で一番美しい物語”と評した傑作。
WEB本の雑誌
血と情念が燃え上がるヨクナパトーファ・サーガの原点 – 新刊めったくたガイド(文=藤ふくろう)
「帝国の動向」フェルナンド・デル・パソ
『帝国の動向』
フェルナンド・デル・パソ,寺尾隆吉
2021/02/01
水声社
1861年、対外債務の支払いを拒否したメキシコ大統領ベニト・フアレスは列強の反発を招き、とりわけフランス皇帝ナポレオン3世はメキシコに向けて軍を派兵、ハプスブルク家の王子が君臨する君主制の創設を目論んだ。白羽の矢が立ったオーストリア大公フェルディナント・マクシミリアンはベルギー王女シャルロットとともに、1864年にメキシコ皇帝夫妻としてその地を踏むこととなる…動乱極まるメキシコ近代史に束の間だけ君臨した皇帝夫妻の辿った悲劇的運命を、史実とフィクションによって描き出したメキシコ文学史に冠たる記念碑的著作。
「レオノーラ」エレナ・ポニアトウスカ
『レオノーラ』
エレナ・ポニアトウスカ,富田広樹
2020/12/25
水声社
「わたしは馬、わたしは牝馬なの」イギリスの大富豪の一族に生まれ、“深窓の令嬢”として育てられたレオノーラは、幼い頃から動物と会話し、精霊が見える不思議なヴィジョンの持ち主。彼女の運命は、シュルレアリストの画家マックス・エルンストとの出会いによってめくるめき冒険へと投げ出される…不世出の画家レオノーラ・キャリントン(1917-2011)の生涯を現実とフィクションのあいだに描きだした傑作長篇。二〇一一年に出版社セイス・バラルが主催する未発表の長編小説を対象とした文学賞、ビブリオテカ・ブレベ賞を受けた。
WEB本の雑誌
力強い声と言葉に満ちた『ゼアゼア』を読め! – 新刊めったくたガイド(文=藤ふくろう)
『乾杯、神さま (ルリユール叢書)』エレナ・ポニアトウスカ,鋤柄史子
こちらの本も気になる。
「吐き気」オラシオ・カステジャーノス・モヤ
『吐き気』
オラシオ・カステジャーノス・モヤ,浜田和範
2020/06/25
水声社
祖国エルサルバドルへの圧倒的な罵詈雑言と呪詛ゆえに作者の亡命さえ招いた問題作『吐き気ーーサンサルバドルのトーマス・ベルンハルト』に加え、ひとつの事件をめぐって無数の異説や幻覚をもてあそぶ虚無的な生を描き出す「フランシスコ・オルメド殺害をめぐる変奏」、歴史の淀みにはまり込んだ罪なき市民が暴力の渦に巻き込まれる「過ぎし嵐の苦痛ゆえに」の計3篇の「暴力小説」を収めた、現代ラテンアメリカ文学の鬼才カステジャーノス・モヤの広大な作品世界を凝縮した作品集。
「時との戦い」アレホ・カルペンティエール
『時との戦い』
アレホ・カルペンティエール,鼓直,寺尾隆吉
2020/02/25
水声社
ニグロの老人が振るう杖の一振りにより、崩壊した館がたちまち元の姿へと戻り、亡くなったはずの館主の生涯をその死から誕生へと遡る傑作「種への旅」をはじめ、「夜の如くに」「聖ヤコブの道」を含む旧版に加え、時間の枠組みを大きく逸脱させるユーモアとアイロニーが散りばめられた「選ばれた人びと」「闇夜の祈祷」「逃亡者たち」「庇護権」の四編をあらたに加えた決定版カルペンティエール短編集。
「気まぐれニンフ」ギジェルモ・カブレラ・インファンテ
『気まぐれニンフ』
ギジェルモ・カブレラ・インファンテ,山辺弦
2019/12/01
水声社
魅力あふれる16歳の少女エステラとの運命的な出会いから愛の逃避行におよぶ主人公。ハバナの街を巡るひと夏のアヴァンチュールの終着点とは?永遠なる“ニンフ”との思い出を言葉遊びに溢れた軽妙洒脱な会話で描き出す、言葉の曲芸師カブレラ・インファンテの快作。
「案内係 ほか」フェリスベルト・エルナンデス
『案内係 ほか』
フェリスベルト・エルナンデス,浜田和範
2019/06/25
水声社
思いがけず暗闇で目が光る能力を手にした語り手が、密かな愉しみに興じる表題作「案内係」をはじめ、「嘘泣き」することで驚異的な売上を叩き出す営業マンを描く「ワニ」、水を張った豪邸でひとり孤独に水と会話する夫人を幻想的な筆致で描く“忘れがたい短篇”(コルタサル)「水に沈む家」、シュペルヴィエルに絶賛された自伝的作品「クレメンテ・コリングのころ」など、幻想とユーモアを交えたシニカルな文体で物語を紡ぐウルグアイの奇才フェリスベルト・エルナンデスの傑作短篇集。
「犬を愛した男」レオナルド・パドゥーラ
『犬を愛した男』
レオナルド・パドゥーラ,寺尾隆吉
2019/04/15
水声社
1977年のハバナ、獣医学雑誌の校正の仕事に身をやつしている物書きのイバンは、2頭のボルゾイ犬を連れて浜辺を散歩する不思議な男、“犬を愛した男”と出会う。犬の話題で親密になっていく2人だが、やがて男は彼のみぞ知る“トロツキー暗殺の真相”を打ち明けはじめる…世界革命を夢見るレフ・ダヴィドヴィチ(トロツキー)の亡命、暗殺者ジャック・モルナルに成り代わるスペイン人民戦線の闘士ラモン・メルカデール、そして舞台はメキシコへと至る。イデオロギーの欺瞞とユートピア革命が打ち砕かれる歴史=物語を力強い筆致で描く、現代キューバ文学の金字塔。
好書好日
「犬を愛した男」 トロツキーと暗殺者 真実は!? 朝日新聞書評から(評者: 西崎文子)
機械仕掛けの鯨が
恐怖の歴史を繋ぐ犬――レオナルド・パドゥーラ『犬を愛した男』(鯨井久志)
「ライオンを殺せ」ホルヘ・イバルグエンゴイティア
『ライオンを殺せ』
ホルヘ・イバルグエンゴイティア,寺尾隆吉
2018/10/31
水声社
《88年に及ぶ英雄的独立戦争の末、1898年にアレパは独立国となった。独立戦争最後の生き残りで、《独立戦争の英雄少年》として名高い陸軍元帥ドン・マヌエル・ベラウンサランが大統領を務め、憲法上最後となる四期目を全うしつつある。》
恐怖政治で権力を掌握する独裁者が治める国アレパの《真の独立》は成し遂げられるのか? 陰謀、クーデター、暗殺計画…… さまざまな思惑が入り乱れるハードボイルド小説さながらの「政治喜劇」
「夜のみだらな鳥」ホセ・ドノソ
『夜のみだらな鳥』
ホセ・ドノソ,鼓直
2018/02/01
水声社
望まれない畸形児“ボーイ”の養育を託された名家の秘書ウンベルトは、宿痾の胃病で病み衰え、使用人たちが余生を過ごす修道院へと送られる。尼僧、老婆、そして孤児たちとともに暮しながら、ウンベルトは聾唖の“ムディート”の仮面をつけ、悪夢のような自身の伝記を語り始める…。延々と続く独白のなかで人格は崩壊し、自己と他者、現実と妄想、歴史と神話、論理と非論理の対立が混じり合う語りの奔流となる。『百年の孤独』と双璧をなすラテンアメリカ文学の最高傑作。
ALL REVIEWS
『夜のみだらな鳥』(集英社) – 著者:ホセ・ドノソ 翻訳:鼓 直 – 牧 眞司による書評
ボヘミアの海岸線
『夜のみだらな鳥』ホセ・ドノソ|楽園という名の冥府
機械仕掛けの鯨が
〈陰〉としての魔術的リアリズム――ホセ・ドノソ『夜のみだらな鳥』(鯨井久志)
フィルムアート社さんのXより
「恐れるな。 『百年の孤独』と並ぶラテン・アメリカ文学の金字塔ホセ・ドノソ著『夜のみだらな鳥』はヴォネガットの励ましがなければ誕生しなかったかも? ホセから「執筆をあきらようと思う(彼は自殺したいとさえ考えていた)」と手紙をもらったときのヴォネガットの返事☟『読者に憐れみを』より
「マイタの物語」マリオ・バルガス・ジョサ
『マイタの物語』
マリオ・バルガス・ジョサ,寺尾隆吉
2018/01/25
水声社
1958年、ペルー山間部でごく小規模な反乱があった。首謀者はトロツキー派の組合運動家、名前はマイタ。その20年後、とある作家はこの事件を小説で再現しようと、事件の証言者たちを辿ってインタビューを試みる。しかし、証言者たちの語りは食い違い、反乱の全貌は窺えないまま最後の証言者マイタの居場所を突き止めることになる……。
史実とフィクションを意図的に交錯させる大胆な手法を試みた、ノーベル賞作家によるメタ・フィクション。
機械仕掛けの鯨が
歴史と虚構の境界を辿る、メタフィクショナルな政治小説――マリオ・バルガス=リョサ『マイタの物語』(鯨井久志)
「圧力とダイヤモンド」ビルヒリオ・ピニェーラ
『圧力とダイヤモンド』
ビルヒリオ・ピニェーラ,山辺弦
2017/12/20
水声社
対人関係が閉塞した世界で暮らす宝石商の主人公は、ひょんなことからダイヤモンドを破格の安さで競り落としてしまうことで、惑星規模の陰謀に巻き込まれてしまう。《圧力者》の存在、ルージュ・メレ、そして人工冬眠計画とは……!?
SF的な想像力で現代世界を皮肉とユーモアで描き出す、キューバの現代作家、ピニェーラの代表作。
「バロック協奏曲」アレホ・カルペンティエール
『バロック協奏曲』
アレホ・カルペンティエール,鼓直
2017/06/08
水声社
銀鉱で成り上がったメキシコ生まれの主人と従者の出立から始まる物語はやがて、黒人の奏でるギター、街頭を轟かす謝肉祭の喧噪、ヴィヴァルディのオペラ、ルイ・アームストロングのトランペットへと、変幻するテンポのうちに秩序は多元的に錯綜していく“幻想交響曲”で幕を下ろす。擬古的な文体で周密な作品空間を描き出し、響きわたる雑多な楽音で読者を圧倒する傑作。
「場所」マリオ・レブレーロ
『場所』
マリオ・レブレーロ,寺尾隆吉
2017/03/30
水声社
目が覚めると、そこは見知らぬ場所だった……
見ず知らずの部屋で目覚めた男は、そこから脱出しようと試みるも、ドアの先にはまた見知らぬ部屋があるばかり。食事もあり、ベットもあり、ときに言葉の通じない人間とも出逢う迷宮のような《場所》を彷徨するうちに、男は悪夢のような数々の場面に立ち会ってゆく……
「集合的無意識」に触発された夢幻的な世界を描き、カルト的な人気を誇るウルグアイの異才レブレーロの代表作。
「傷痕」フアン・ホセ・サエール
『傷痕』
フアン・ホセ・サエール,大西亮
2017/02/24
水声社
「妻殺しの容疑者が取調中に窓から身を投げた…」自殺の瞬間に偶然立ち会った若き新聞記者アンヘルと、自堕落な生活を続けるその母。容疑者の旧友で賭博に入れこむ元弁護士セルヒオと、神秘的な女中デリシア。取り憑かれたようにオスカー・ワイルドの翻訳に没頭する判事エルネストと、謎の男トマティス…“出口なし”の政治状況を背景に、“傷”を抱えた登場人物たちの複数の視点からひとつの事件を浮かび上がらせた初期の傑作長編。
「襲撃」レイナルド・アレナス
『襲撃』
レイナルド・アレナス,山辺弦
2016/12/01
水声社
舞台は唯一無二の独裁者「超厳師」が支配する絶対的な独裁国家。自由を剥奪され「けだもの」として扱われている国民には、ひたすら体制に奉仕するための強制労働が命じられているディストピア社会…。非人道的な抑圧システムが張り巡らされた世界で、禁止された“囁き”を密告し、遺反者たちを抹殺する取締員として頭角を現わした主人公は、首都を離れ各地を粛正して回る旅に出る。その真の狙いはただ一つ、母親を探し出して亡き者にするという妄執的な渇望だった…。キューバの亡命作家レイナルド・アレナスによる自伝的五部作の最後を飾る衝撃的な作品。
好書好日
レイナルド・アレナス「襲撃」書評 野生の詩人が現実を爆破する(評者: 星野智幸)
「方法異説」アレホ・カルペンティエール
『方法異説』
アレホ・カルペンティエール,寺尾隆吉
2016/10/01
水声社
太平洋と大西洋の両方に海岸線をもつ架空の国を舞台に、独裁者・第一執政官を主人公に据え、デカルト的理性のパロディとして「啓蒙的暴君」というラテンアメリカ世界の類型的独裁者の堕落・腐敗を象徴的に描き出す、カルペンティエール随一の傑作長編。
機械仕掛けの鯨が
乗り越えろペダン――アレホ・カルペンティエール『方法異説』(鯨井久志)
「コスタグアナ秘史」フアン・ガブリエル・バスケス
『コスタグアナ秘史』
フアン・ガブリエル・バスケス,久野量一
2016/01/01
水声社
「ジョゼフ・コンラッド、あなたはぼくを盗んだ、あなたはぼくの人生を排除した…」コンラッドが描き出した架空の国コスタグアナ、しかしそれは、歪曲されたコロンビアの歴史だった…『ノストローモ』創作の陰に隠蔽されたコロンビア人の影を浮かび上がらせ、語られなかった物語、語られなかった歴史を南米側から暴きだす、現代ラテンアメリカ文学の傑作。
機械仕掛けの鯨が
削ぎ落とされた影の歴史の回復――フアン・ガブリエル・バスケス『コスタグアナ秘史』(鯨井久志)
「人工呼吸」リカルド・ピグリア
『人工呼吸』
リカルド・ピグリア,大西亮
2015/09/01
水声社
19世紀のロサス時代に活躍しながらも、亡命先で言葉を遺し続けたエンリケ・オソリオ。演説中に撃たれ、言葉を口にすることしかできない元上院議員ドン・ルシアーノ。二人の人物に関心を寄せ、書簡を交えて歴史を再構成するエミリオ・レンシとその叔父マルセロ・マッジ。そして戦火を逃れ亡命してきたポーランド人タルデフスキ。錯綜する登場人物たちの言葉の背後に見え隠れする死の影とは…祖国の未来を照射する書簡体小説の第一部から、“語りえぬもの”について語られる第二部を通して、封じ込められた歴史の運動に息を吹き込む現代アルゼンチン文学の傑作。
「ロリア侯爵夫人の失踪」ホセ・ドノソ
『ロリア侯爵夫人の失踪』
ホセ・ドノソ,寺尾隆吉
2015/07/01
水声社
外交官の娘としてマドリードに来たブランカ・アリアスは、若くしてロリア侯爵と結婚する。若さ、富、美貌、すべてを備えた侯爵夫人に唯一欠けていたのは、夫との“愛の達成”だった。未亡人となりながらも快楽を追求し続け、さまざまな男性を経験するブランカにおとずれるものとは…!?軽妙なタッチで人間の際限ない性欲を捉え、その秘められた破壊的魔力を艶やかながらもどこか歪に描き出す、ドノソ的官能小説!!
機械仕掛けの鯨が
エロ漫画か?――ホセ・ドノソ『ロリア侯爵夫人の失踪』(鯨井久志)
「ガラスの国境」カルロス・フエンテス
『ガラスの国境』
カルロス・フエンテス,寺尾隆吉
2015/03/01
水声社
国境を接するメキシコとアメリカ。“こちら側”と“あちら側”の人間たちが生きる世界を九つの物語によって多層的に描き出し、登場人物たちの声を響かせ祖国“メキシコ”を高らかに謳いあげる、現代版“人間喜劇”。
機械仕掛けの鯨が
メキシコ・アメリカに跨る透明な境界、そして百合――カルロス・フエンテス『ガラスの国境』(鯨井久志)
「八面体」フリオ・コルタサル
『八面体』
フリオ・コルタサル,寺尾隆吉
2014/08/01
水声社
日常のなかに突如として闖入してくる“鮮烈な夢のイメージ”を作品へと昇華させるフリオ・コルタサル。実験的な語りの手法を用いて“自分の最も奥深い部分”を表現し、幻想と日常の交錯を多面的に描き出した傑作短編8つを収録。付録として白昼夢を見ているかのような3つの短編(『最終ラウンド』)に加えて、実践的な短編小説論(『短編小説とその周辺』)も併録。
機械仕掛けの鯨が
創作とは、一種の「悪魔祓い」である――フリオ・コルタサル『八面体』(鯨井久志)
「対岸」フリオ・コルタサル
『対岸』
フリオ・コルタサル,寺尾隆吉
2014/02/01
水声社
ボルヘスと並ぶアルゼンチン代表作家による幻の処女短編集。怪奇・幻想的な作品からSF的想像力を遺憾なく発揮した作品まで、フィクションと現実のあいだで戯れる珠玉の13編。短編小説というジャンルとテーマについて持論を披瀝した貴重な講演「短編小説の諸相」もあわせて収録。「剽窃と翻訳」「ガブリエル・メドラーノの物語」「天文学序説」の三部構成。
「別れ」フアン・カルロス・オネッティ
『別れ』
フアン・カルロス・オネッティ,寺尾隆吉
2013/10/01
水声社
田舎町のホテルにひとりの男がやって来た。無愛想な人柄…若い娘との待ち合わせ…妻子の来訪…町人たちは噂し、疑り深い語り手は男の背景にひとつの物語を紡いでいくのだが…語り手の視点から言葉巧みに読み手を作品世界へと誘い、作者自らこの作品を偏愛した秀逸な中編。表題作のほか、モンテビデオで起きた実話を憎愛と復讐の物語へと変貌させた「この恐ろしい地獄」。婚礼というオブセッションに取り憑かれた狂女を幻想的に描いた「失われた花嫁」の傑作短編を収録。
「境界なき土地」ホセ・ドノソ
『境界なき土地』
ホセ・ドノソ,寺尾隆吉
2013/07/01
水声社
大農園主ドン・アレホに支配され、文明から取り残され消えゆく小村を舞台に、性的「異常者」たちの繰り広げる奇行を猟奇的に描き出す唯一無二の“グロテスク・リアリズム”。バルガス・ジョサに「最も完成度の高い作品」といわしめたチリの知られざる傑作。
好書好日
ホセ・ドノソ「境界なき土地」書評 無意識と抗えぬ血が湧き出す(評者: いとうせいこう)
「孤児」フアン・ホセ・サエール
『孤児』
フアン・ホセ・サエール,寺尾隆吉
2013/05/01
水声社
舞台は16世紀の大航海時代、見果てぬインディアスを夢見て船に乗り込んだ「私」が上陸したのは食人インディアンたちが住む土地だった。「私」は独り捕らえられ、太古から息づく生活を営む彼らと共に過ごしながら、存在を揺るがす体験をすることになる…。無から生まれ、親もなく、名前もない、この世の孤児となった語り手を通して、現実と夢幻の狭間で揺れる存在の儚さを、ボルヘス以後のアルゼンチン文学を代表する作家が描き出す破格の物語。
「ただ影だけ」セルヒオ・ラミレス
『ただ影だけ』
セルヒオ・ラミレス,寺尾隆吉
2013/03/01
水声社
1979年、ソモサ独裁政権の崩壊を目前に控えたニカラグア、ソモサの私設秘書官として権力の影で活動していたアリリオ・マルティニカは海から逃亡を企てるも革命軍に捕えられ、独裁政権の悪行に加担した嫌疑で民衆裁判にかけられる…。証言、尋問、調書、供述、手紙。事実のなかに想像を巧みに織り交ぜ、鮮烈な描写と圧倒的な語りの技法のもとに、歴史的事件の裏側をフィクションの力で再構築する現代ラテンアメリカ文学の新たな傑作。
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