
いろいろ余計な話が多いので、
目次から飛んでください。
青空文庫で読む、実験小説と不思議な本
リンクは青空文庫、スクロール可能、
作家名、出版社名などで並べ替えもできます。
(まだ探してる途中です)
★は小説、●は詩、その他はエッセイ。
Kindleへのリンクと、ページ数つき。
作品数が多い人は作家ページへのリンクつき。
『ドグラ・マグラ』夢野久作
通称「日本三大奇書」
『黒死館殺人事件』小栗虫太郎
通称「日本三大奇書」
『藪の中』芥川龍之介
《複数の人間の証言を羅列する形式、霊能者を介して死人が証言する点はアンブローズ・ビアスの「月明かりの道」の影響が指摘されている》
『指環』江戸川乱歩
対話体小説
『機械』横光利一
四人称視点、句読点が少ない
『飛行機から墜ちるまで』吉行エイスケ
《詩とも小説ともつかない物語が、リズムのよいテンポで繰り広げられるダダイズムを象徴するような作品》
『蜜のあわれ』室生犀星
対話体小説
『真夏の夜の恋』谷崎潤一郎
戯曲体小説
『春と修羅』宮沢賢治
タイポグラフィ。この作品の一部は少しずつ各行の段組が上下にずれ、全体がうねっているような形になっている。
『AU MAGASIN DE NOUVEAUTES』
李箱
モダニズム
筒井康隆『実験小説名作選』掲載
『ナポレオンと田虫』横光利一
『Kの昇天』梶井基次郎
『風博士』坂口安吾 『雀こ』太宰治
『吊籠と月光と』牧野信一
リンクは青空文庫、スクロールできます。
実験小説系だけだと少なくて淋しいな、と思ってシュルレアリスムとダダイスムにも手を出してしまった。よく知りもしないのに。でも素敵な作品、いろいろ見つかった。
まずは「日本三大奇書」の夢野久作『ドグラ・マグラ』(679ページ)と、小栗虫太郎『黒死館殺人事件』(490ページ)。芥川龍之介『藪の中』と吉行エイスケ『飛行機から墜ちるまで』は、説明文にそそられる。その説明が一番実験小説っぽかったのは、横光利一の『機械』。四人称視点って、どんな感じだろう。
実験小説ではないかもしれないけれど、青空文庫には、澤西祐典×円城塔×福永信「鴨川を読む×書く」というイベントのために書き下ろされた小説もあって、無料で読むことが可能です(著作権存続作品)。
詩の方ではとにかく李箱(イ・サン)の個性が強い。インパクトがすごい。斎藤真理子さん翻訳の『翼 李箱作品集』には、小説や童話、紀行文や書簡もあるそうで、そちらも気になる。
ダダイストな中原中也の『山羊の歌』は、有名な「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」が出てくる作品。宮沢賢治『春と修羅』はタイポグラフィな感じ。塩川いづみさんイラストの宮沢賢治『春と修羅』も可愛い。
ちなみに私が青空文庫を読むときは、その作者の図書カードページにある「青空 in Browsers」を使用して読んでいます。
実験小説が読めるWebサイト・その1
酉島伝法さんの「棺詰工場のシーラカンス」

棺詰工場のシーラカンス
注釈の注釈による超現実詩小説
酉島伝法さん、こんな作品を書く方だったんだ。ブログ「棺詰工場のシーラカンス」の不思議な小説。『奏で手のヌフレツン』とも、造語がたくさんの『皆勤の徒』とも、また違う雰囲気の実験小説。
こういうの注釈小説というのだそう。ページごとに僧衣【1】とか両性類【2】みたいに番号を振ったリンクが貼られていて、1ページ目からさっそく悩んでしまう(ミスしたくない)。
たぶん紙の本だったら、とりあえずは順番にページを捲っていくことになるのだろうけれど、Webサイトの場合は自由にリンクをクリックできてしまうため、余計に困る。
まあ、全部読もうとせずに最短ルートを行ってもいいんだろうけれど。最新更新は【355】虚無僧、1日1ページずつ読んでいったら、一年ぐらいで読み終えることができるね。
こういうのを見ると、どうやって作っているんだろうかと思ってしまう。『かまいたちの夜』のようなアドベンチャーゲームの分岐を考えていくような感じなのかな。手書きなのか、スマホやPCを使って考えるのかわからないけれど、300ページ超えともなると、すごいことになっていそうだ。
井上夢人さんの「99人の最終電車」
99人の最終電車
ハイパーテキスト小説
↓下の実験小説の書評などを書かれている、大塚晩霜さんのブログで知った、井上夢人さんの「99人の最終電車」(1996年)。ハイパーテキスト小説だそうで、まるでゲームみたい。レトロなイラストが懐かしい。8年ほどで完結したと、誰かが呟いていた。
これ、PCとスマホで感じ方が違う。PCだとマウスでだいたいどこにリンクがあるのか事前に把握できるけれど、スマホの場合はそれがない分、すこしドキドキ。赤いマークは女、青は男、じゃあこの水色は?上の方のマークをクリックすると、人物INDEXが見られるようになっている。
それにしても、この人の顔のイラストは、誰が描いたものなのだろう(やっぱり井上夢人さん?)。何が怖いって、クリックするたびに出てくるこの顔が一番ギョッとする。
ゲームブック (Gamebook) は、読者の選択によってストーリーの展開と結末が変わるように作られ、ゲームとして遊ばれることを目的としている本である。
文体は、読者に対して語りかけるようなもの(二人称体)が多くを占める。
井上夢人さん、岡嶋二人名義で『ツァラトゥストラの翼』というゲームブックも出されていた。実験小説とゲームブックの違いってどこにあるのだろう。
↑この本を少し試し読みしてみたけれど、物語の横で、丁寧語で語りかけてくる誰かがいる。この人がいなくても、「(あなたは)どっちの選択肢を選ぶ?」という質問自体が二人称体。そう考えると、先ほどの酉島伝法さんの「棺詰工場のシーラカンス」も、この「99人の最終電車」もゲームブックでないと判断がつく。
大塚晩霜さんの「実験小説」
さて、みなさんご存知の大塚晩霜さんのブログ「とりぶみ」。私はあの翻訳家の木原善彦さんが尊敬する実験小説愛読者ということで、Xで紹介されているのを見て知ったのだけれど、いろんな意味ですごい方。
頼りにしている「奇書・実験小説・特殊文体 wiki」で紹介されていた本を検索していて、このブログにたどり着くこともしばしば。コメントなどの語り口も、普通の面白さとは違って、なんか飛び道具的な感じ。
大塚晩霜さんの実験小説
ア段イ段抜きの夏目漱石『夢十夜』
リポグラム(文字落とし)
文体練習&文体練習おまけ(解説)
レーモン・クノー『文体練習』より
〒ν八℃
四角形にマウスポインタを載せると
テレパシーが受信できる(PCのみ)
ほかにもいろいろ
木原さんの影響で最近、実験小説について調べることが多くなって、「リポグラム」という言葉を知って。そのタイミングで出会ったのが、このア段とイ段を抜いた夏目漱石『夢十夜』のリポグラム。その名も「五分の五夜」。
ありがたいのが、原文を併記してあること。どこがどう変わっているのかがわかりやすい。ブラウザのページ内検索しながらだと、該当部分に色がつくので、見失ってもどうにか確認できる。
「四角な膳」→「ローテーブル」いいな。リポグラムもいいけれど、全部カタカナ的な言葉に変換したりしても面白そう。文豪の家を洋風にしたい。
レーモン・クノーの『文体練習』は、1つのストーリーを99通りの文体で書いた本。それをオマージュした『大塚晩霜さんの文体練習』は100通り。(4)目次に秘密が隠れているとのこと。口で唱えはじめたけれど無理そうだ。
今回紹介されてて好きだったのが、『〒ν八℃』(←あ、テレパシー)。マウスポインタをかざすと、並べられた□□□□それぞれに、吹き出しみたいに文字が出る(PCのみ)。お話の内容もすごく素敵だった。下に原文も掲載されていたけれど、上の方がずっといい。
実は、スマホで□を長押しして、ブラウザの読み上げ機能を試してみたりもしてみた。でも「しかく」と言われて失敗。そういう機能も活用できたら楽しいかも。
あと、可愛いのは『小松軍曹と佐藤兵長』の他一篇の方で、『エミリーとカレーライス』ではない。タイトルに騙されてはいけない。
改めて書評などを見ると思うけれど、こんなふうに、初心者にもわかりやすく説明してくれる方って、とても貴重な存在。私の場合、実験小説の読者になって迷路に迷い込みたい気持ちより、迷路の上から俯瞰して見て、「こうなっているんだ」としくみを理解したいタイプだから、余計にそう思う。
何だろう、木原善彦さんもそうなのだけれど、ちょっとした一言や提供してくれる話題、ブログで紹介した本などが、全部勉強になる(私との相性の問題かな)。いろんな意味で良き先生だ。
アンサイクロペディアの「文体練習」

レーモン・クノーの「文体練習」の説明を、99通りの文体で叙述する。天空の城ラピュタのムスカ大佐的とか、次回予告的とか、いろいろ面白い。
国立国会図書館デジタルコレクション
「国立国会図書館デジタルコレクションで読める怪奇幻想文学」

門前さん、「国立国会図書館デジタルコレクション」で読める怪奇幻想文学をたくさん紹介されてる。
海外の方は、ナボコフもあるし、アルフレッド・ジャリの「馬的思考」なんかもあるから、実験小説系もありそうな感じ。荒俣宏さん、澁澤龍彦さん編集の本とか、サンリオSF文庫とか。出版年順に並べてあるのも親切。
なんと日本の方を見たら、集英社文庫の筒井康隆「実験小説名作選」が読めるようになっているではないですか。他も幻想文学やミステリー、SF小説のアンソロジーがいろいろ。「文豪ナンセンス小説選」にも、もしかしたら実験小説系のものが混じっているかも。
門前さんのnoteには、他にも「国立国会図書館デジタルコレクションで読める百科事典」や、「ラヴクラフト作品とクトゥルー神話」、「フランス国立図書館“Gallica(ガリカ)”で怪奇幻想文学を検索してみた」ページなど魅力的なまとめ記事があるのでぜひ。
番外編「奇書ガイドのすすめ」

↑ひとつ上のまとめ記事を書かれていた門前さん、一箱古本市では「久平文庫(きゅうへいぶんこ)」という名前で出品されているということで検索したら、もう一つページを発見。
「久平文庫」を共同出店されている久平さん。先日Xでリポストした「奇書ガイドのすすめ」のページをまとめられている方でした。
奇書ガイドのすすめは、奇書を紹介する本や雑誌をまとめたページ。紹介されていた「ユリイカ 2023年7月号 特集=奇書の世界」。円城塔×酉島伝法の対談に、竹中朗×山本貴光×吉川浩満の座談会の話題が、特殊版元探訪「国書刊行会」とかすご過ぎる。
特集自体も魅力的なのだけれど、高山宏さんや橋本輝幸さん、立原透耶さん、川野芽生さんなど寄稿されている方々も魅力的で、その名前で検索したら、さらに素敵な本に出会えそう。
最初の一冊目で立ち止まってしまった。というか2冊目の奇書っぷり。あ、澁澤龍彦さんのお写真。『怪書探訪』とか奇書についての随筆とか。あぁ、本のメインテーマではなくても、巻末にブックガイドがあるということもあるんですね。ルリユール叢書もそうだけど、巻末は要チェックだ。
こんな一般人の方の謎を解明しても仕方がないのですが、なんとこのお二人、ご兄弟だったみたい。
門前照二さん(X)の方は海外幻想文学、久平さん(X)はサブカルチャー寄りの本がお好きなよう。紹介されている本の中には『招き猫百科』なんて可愛らしい本もあったりして。素敵な本と出会う穴場かもしれない。
「国会図書館デジタルコレクションで読める戦後日本の文芸評論」

kado/Ryusei Kashima
国会図書館デジタルコレクション個人送信サービスで読める戦後日本の文芸評論
kadoさん(X)がまとめてくださっている、戦後日本の文芸評論。なんとミシェル・ビュトールの名前がある。
清水徹さんの『ミシェル・ピュトール作『心変わり』解説』が読める(ピュトールになってる)。こちらも出版年順に整理されているのが良い。掲載されている作品も、私にはちょっと難しいのだけれど、わかる人にはわかるはず。
kadoさんは、文学フリマにも出店されてる方みたい。プロフィールにあった文芸誌『蟹文学』ってなんだろう?編集したと書いてあったけれど。
なんか掲載されている人数がすごい(作品数は600弱)。これ、全部蟹にまつわる作品なのかな、蟹に取り憑かれてしまっている(詳細は↑蟹文学のXへ)。
「国会図書館デジタルコレクション」の実験小説系キーワード検索
実験小説が読めるWebサイト・その2
「アジアの現代文芸 電子図書館」
アジアの現代文芸 電子図書館
公益財団法人大同生命国際文化基金
アジア諸国の現代文芸(小説、詩、随筆、戯曲、評論)の内、わが国への紹介が望まれるものを選考のうえ、翻訳・出版するもので、アジアの国々の今日の姿をそれぞれの国が生んだ文芸作品を通じて理解することを目的としています。
より多くの文学ファンの眼に触れてもらうことを目的に、2012年度から新刊・既刊の電子書籍化を行っています。
タイの作家、ウィン・リョウワーリンさんの『インモラル・アンリアル』という作品が実験小説っぽいという情報を見つけて、他の作品が著作権存続作品ながら青空文庫にあるのを発見し、こちらのページに辿り着きました。
この作家さんの作品が読めるのは『現代タイのポストモダン短編集』だし、他の作品の説明文にも「ヒンディー・リアリズム小説の最高傑作」とか、第43回日本翻訳出版文化賞受賞作とか。もしかしたら、すごいページを見つけてしまったかもしれない。
実は、大同生命国際文化基金さんの名前は、ポッドキャスト番組「翻訳文学試食会」のまとめ記事を作成する際に目にしていたのでした。本紹介のポッドキャストも聴いてみよう。
数えてみた感じだと、60冊ぐらいある。イラン、インド、インドネシア、カンボジア、スリランカ、タイ、トルコ、バングラデシュ、パキスタン、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオスと国別に作品を検索できるし、作品概要もそれぞれ見られる。Androidを使用中の私の場合は、「Google Playブックス」の方にダウンロードされました。
木原善彦さんの「ハッシュスリンガーズ」
木原善彦さん翻訳のトマス・ピンチョン風の短いお話が読めるブログ。最初のページの説明によると、このハッシュスリンガーズの元サイトは『ブリーディング・エッジ』刊行に合わせて作られたWebサイト(英語)。
このブログは、そこに掲載されたショートショート(作者不詳)を、『逆光』を翻訳された木原さんが、日本語に訳して投稿していたもののよう。
ハッシュスリンガーズ: 春の最初の日
(2013年9月20日金曜日)
実験小説的なものがあるのかどうかはわからないけれど、小説に出てくる小ネタがちょこちょこ出てくるので、ピンチョン読者はうれしいはず。
このブログの何がいいって、木原善彦さんの翻訳した文章もだけど、訳者解説が読めること。説明文には、リンクも多用(リンク切れは古いページを紹介した私のせい)。細かいところに目が行く感じは、ピンチョン1ページ一言つぶやきを思わせる。
ピンチョンについては、私のブログでもまとめていて、↓そちらでは新潮社『トマス・ピンチョン全小説』の試し読みページへのリンクを一覧にして紹介しているので、よろしければご活用ください。
\トマス・ピンチョンまとめています/
大人乙女の新刊案内「青空文庫の作家別一覧」

私が作ったページ、ここの姉妹ブログです。一応、50音全部調べて、気になる作家の青空文庫作品を底本ごとに整理しています(田山花袋は書きそびれたまま、あと知らなかったからリルケも)。
作品の雰囲気がわかるよう、作家ごとに表紙をつけていましたが、Amazonの気まぐれにより、表示不可能に。ページ数も一つ一つ調べたのですが、Kindleに合わせて変更されてしまいました。
なので正確なページ数ではないですが、一応、短編か長編かぐらいはわかるかと。あくまで目安程度のものだと思っていただけたら。
他にも【新字新仮名】などの表記や【ミステリー】などのジャンルも、アンソロジーの目次などから調べて作品ごとに記載。そのため、作家別のページは少し見づらい感じにはなってしまっているかも。
実験小説については、目次で夢野久作などの作家名から、もしくは海外文学、ミステリーなどのジャンルからお探しください。
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